それを裏付けるかのように、前回から1週間後、自分には起きるはずのないことが起こったと勇樹さんから相談がきました。
奥さんではない女性から告白されたそうです。
嬉しい半面、奥さんに対してすごく悪いことをしている気がして困っている、という内容でした。
「パートナーが浮気をしているんです」
という問題からスタートし、自信を付けていくと、逆に今度は「自分が浮気したい」という気分になることが良くあります。
不思議なんですが、ちょうどいいタイミングでそのお相手も現れることが多いので、前もって
「あなたが浮気しないように気を付けてくださいね」
と釘を刺しておくくらいです。
夫婦やカップルといったパートナーシップはバランスをとるものです。
片方が浮気したとしても、それはもともと2人の関係に『浮気の種』があったということ。
相手だけの問題ではなく、自分自身の問題でもあるんです。
なので、「浮気したのは奥さん(旦那さん)だったけれども、一歩間違えば、自分の方が浮気してたかも・・」という事態に陥りやすくなるんですね。
勇樹さんにも、魅力をアップし自信が出てくるとそういう相手が現れることは事前にお伝えしていたんですが、まさか自分に起こるとは思ってもいなかったそうで、
「これが嫁さんだったらすごい幸せだったんだろうなぁ」
と嘆いていました。その相手、悪くいうと
「リハビリさん(くん)」
なんですが、奥さんから男性として見られていない分、すごく心が揺れ動いてしまうんですね。
相手の女性とは話も合うし、すごく好きだとアピールされるため、彼もまんざらでもない様子でした。
けれど、期待にこたえられないことや浮気しているような感覚もあり、嬉しさと罪悪感のせめぎ合いで苦しんでもいました。
それでも、勇樹さんの心には
「このまま離婚するんだろうけれど、なんとかなるんじゃないかって本当に思っているんです。どうなるか先は見えているはずなんですけどね」
と、不思議と未来に対する希望があったようです。
こういう出来事はカウンセラー側からみると、プロセスが確実に進んでいるなぁと感じる瞬間でもあります。
というのも、今までは奥さんが
心理的に強い立場(自立側)
彼が弱い立場(依存側)
で固定化されていたんですが、勇樹さんの魅力がアップしてきたことにより、少しずつその関係性が崩れていました。
強い立場に立てば、それだけ発言権が大きくなり、自分を見てもらえる機会も増えていきます。
それは、今まで依存側で感じていたみじめさや辛さをあまり感じなくなる、ということ。
実際、前は彼女に言いたいことを言えずにいたのですが、
この頃には気にせず発言できるようになっていました。
このことは、問題と向き合い腹をくくってきた結果、得られるご褒美でもあります。
なので、勇樹さんには、
「告白されるほど男性としての魅力がアップしている」
ということをきちんと受け取ってくださいね、
とお伝えしました。また、
「もしかしたら勇樹さんの方が浮気したくなるかもしれませんが、最後の一線だけは越えないようにしましょうね。今は気持ちが盛り上がってきたり、浮気しているような感覚になったりするかもしれませんが、そのままの気持ちを受け入れていきましょう。
好かれて嬉しいんだなとか、浮気したくなるなとか思ってもいいので、浮かんできた気持ちをあまり押し殺さないようにしましょうね」
とお伝えしました。
「浮気したいなんて気持ちを持っちゃいけない!」
「いけないことをしている自分は悪いやつだ!」
と感じている気持ちを否定して、見ないようにすることは得策ではありません。気持ちを抑えようとしても、溢れ出るものは止められないのです。
無理に抑えようとすると、逆に感情に振り回されてしまい、気持ちが暴走してしまうことだってあるんですね。
「こんな風に感じている自分が嫌だから、いっそ両方から離れてしまおう」
と無理矢理一人暮らしをはじめてしまう方もいるくらいです。なので、そういったことが起こらないためにも、
「今、自分はそんなふうに感じているんだな・・」
と受容することがとても大事なんです。
さまざまな葛藤がありましたが、勇樹さん自身、感情と向き合うことに慣れていたので割と落ち着いていたようです。
この頃では、奥さんとの関係性も悪くなく、(ちょうどクリスマスの時期だったので)彼女に誘われて家族3人でイルミネーションを見に行く予定ですと、ちょっと嬉しそうでした。
感情と向き合うことに慣れていくと、心を揺るがす大きな出来事があっても、流されず冷静に対処できるようになっていきます。
こんなところにもカウンセリングの効果が出ていました。
10.奥さんの提案に困惑する心 〜彼女を受け入れる〜 へ続く